「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」では誰も教えてくれない事!

とある物流倉庫の屋根上での作業で雨樋の修繕をしています。
高さは約30m レストレインでの墜落防止をして作業しています。
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この2月1日よりフルハーネス型の使用が義務付けられた場所になりますが、作業床が有って手摺が無いだけなのでこの様な場所では特別教育までは法的には要求されていません。

また、今回のフルハーネス型の特別教育は墜落時に身を守る為のものではあるのですが、本来はその墜落にまで至らない技術をしっかり学ばなくてはならないのに今回の特別教育の中にレストレインが出てくるのはほんの僅かです。

さて私らはロープアクセス(ロープ高所作業)をしていますので、ハーネスはフォールアレスト兼用型のロープアクセス用ハーネスを使用して、レストレインとしても使える幾つかの器具がありますが、今回の作業に指導役として来てくださった板金屋さん(雨樋工事は建築板金)は一般的な国内製品のフルハーネスに2丁掛けランヤードでした。

そして、私らのハーネスは墜落制止用器具を接続する背中と胸のD環(フォールアレストアタッチメント)以外に腰回りに3個のD環が附いており、またその全てがレストレインを接続するアタッチメントとしてのEN基準をクリアしたものになっていますので長さ調整式ランヤードの接続も容易ですし、この様な屋根端部でもレストレインとしての微妙な長さ調整も簡単に出来ます。

今回の作業で感じたのは、一般的な国内流通品フルハーネスで背中のD環だけではこの様な端部での作業時にレストレインの調整が非常に取りにくいです。
レストレインですから最も端部で常時ロープがピンと張る状況にするには、左右に動くとどうしても微妙な長さ調整は必要になります。
残念ながら国内製品にはそこまでの物が無いので、結局端部においてピンと張らなくてはならないレストレインがユルユルの状態で作業する事になる事になり、結局レストレインの役割を果たして無い墜落リスクに対策のされていない作業をしてしまう状況が想定されます。
また一般的に流通している16や18ミリの三打ちロープは、私らの使うカーンマントル構造の11ミリロープに比べると扱い易さや対応器具の観点からレストレインには不向きです。

ハッキリ言いましょう!
フルハーネス型墜落制止用器具で墜落に至った時に現場の状況にもよりますが、ほとんどの場合レスキューは簡単ではありません。
レスキューはそれなりのトレーニングを受けていないと出来ませんし、国内のメーカーにレスキュー器具もありますが誰が要救助者にそれを接続しに行けますか?
また、要救助者が動けたにしても自分の背中のD環に自分で接続するのは不可能です。
そして消防のレスキュー隊を呼んだとしても、手際良くサクッとロープレスキューが出来るのは一部地域の一部の訓練されたレスキュー隊だけです!

フルハーネス型墜落制止用器具特別教育の中でサスペンショントラウマも習うと思いますが、上に書いた事が現実です。

決して、フルハーネスだったら落ちても大丈夫なのではありません!
まず、墜落に至らない墜落防止技術を身に着けることが一番大切な事です!


参照 → レストレインって何ですか? (高所作業)